桜花抄 『ねぇ、まるで雪みたいじゃない?』『そうだね』 『ねぇ、秒速5センチなんだって』『え、なに?』『桜の花の落ちるスピード。秒速5センチメートル』『ふーん···。明里そういうことよく知っているよね』『ふーん。ねぇ、なんだかまるで雪みたいじゃない?』『そうかな···。あっ! ねぇ、待ってよ···』『明里!』『貴樹くん···。来年も、一緒に桜見れるといいね』 彼女を守れるだけの力が欲しいと、強く思った。 それだけを考えながら僕はいつまでも、窓の景色をいつまでも見つめ続けた。